二次小説

永遠のジュリエットvol.32〈キャンディキャンディ二次小説〉

早朝、まだ暗いうちに、キャンディがそっと病室をのぞくとテリュースは薬が効いているのか、微かな寝息をたてて眠っていた。


トゥールーズという街の総合病院までは馬車で1時間半ほどかかるらしく、キャンディはまだ暗いうちに出発しなければならない。


その日、別の病院に出かけて一日中不在になることを、前もってテリュースに話しておくべきかもしれないとキャンディは頭の隅で思ったが、アレクサンドラ王太后の慰問についてまでもつい話してしまいそうで、キャンディは手紙を置いていくことにしたのだった。


────目を覚まして手紙を読めば、わかってもらえるわ。夕方には帰ってこれるんだし、大丈夫よね。


そう思って、キャンディは眠るテリュースの枕元にあるサイドテーブルに、畳んだ洋服とハンカチに包んだハーモニカと手紙をそっと置いた。


ハーモニカは、面と向かって渡すのが照れ臭かったのもある。


───ずっと持っててくれたのね。嬉しいわ。


そんな言葉を手紙に添えて。


今日は少し遠い街にある総合病院にお手伝いに行くこと、夕方には帰ってくること、帰ってきたら、すぐに病室に顔を出すつもりであることもキャンディは忘れずに書き添えた。


そして、しばらく、薄い灯りに照らされたテリュースの端正な寝顔を宝物のように見つめて、小さく呟いた。


────行ってくるわね、テリィ。

キャンディが馬車で、仮設病院を出発してから1時間ほどたった頃。


テリュースは、ノックの音に気付いて目を覚ました。いつもなら返事を待たず、ノックの音と共に飛び込んできてカーテンを開けるキャンディなのに、今日はノックをした後、入ってこない。


────なにやってんだ?


また何か、いたずらでもしようっていうのか?


そんなことを思っていると、もう1度ノックの音が響いた。


不審に思いながら『どうぞ』と声をかけるテリュース。すると入ってきたのはベテラン看護師のひとりだった。


「失礼します、テリュースさん。今日はキャンディさんが不在ですので、私が担当させていただきますね」


「……………キャンディが不在?」


「あら、聞いていらっしゃいませんでした?今日はキャンディさんは、トゥールーズにある総合病院に派遣されてるんです」


「………………」


「でも心配いりませんよ。夕方には戻っていらっしゃいますから。さあ、朝の検温をしましょう」


ベテラン看護師はそう言って、テキパキと朝の健康チェックを済ませるとすぐに出ていった。


去り際にその看護師は。


数日前からイギリス王室のアレクサンドラ王太后が、サウザンプトン沖のワイト島にあるオズボーンハウスに滞在していて、今日はサウザンプトンの病院を慰問し、その中でこの仮設病院にも訪れる予定であることをさらりと伝えた。


その知らせを聞いても、テリュースは特に不審には思わなかった。ごく当たり前のことと受け止めた。


それは、アレクサンドラ王太后が、普段からイギリス赤十字の総裁として精力的に活動し、各地の病院へも数多く慰問していて、今回の大型客船爆破の被害者たちへの見舞いは、しごく当然と思えたからだ。


だが後に。
その訪問には、別の目的がある事をテリュースは知ることになる。


その時は。
『キャンディが今日1日中いない……………』


急に。心の中に黒い雲が立ちこめるような気持ちになるテリュース。


『だったら仕方ない。”二度寝”でもするか』


寝ていれば、その時間は嫌なことから解放される、忘れていられる。昔からテリュースは、そう思っていた。セント・ポール学院時代も、テリュースがよく昼寝をしていたのは、そう思っていたからだ。


テリュースが、窓と反対向きに体勢を変えようとした時、ふとサイドテーブルの上に置いてある物に気づく。


そこには、畳まれた洋服とそばには白い包み。


彼はゆっくりと起き上がり、サイドテーブルに近づくと、その包みをそっと開けみる。


────これは!


入っていたのは、見覚えのあるキャンディからもらったハーモニカだった。下手な刻印の『T&C』の文字。そして小さく折り畳んだ手紙。


テリュースが、病室で気がついた時には、着ていた服は身ぐるみ剥がされていて、もうハーモニカは戻ってはこないだろうと内心諦めていた。


『ない』と決定的な喪失を知ってしまうよりも、『あやふやなまま』にした方が気持ちが楽だった。だから、誰にもハーモニカのことは尋ねなかった。


だが、ハーモニカは戻ってきた。
キャンディもハーモニカももう二度と離さない、テリュースはキャンディの手紙を読みながら固く心に誓うのだった。

ほぼ予定通りの時刻に、王室メンバーの乗車を示す青いライトの『ディムラー』が、先導する警護の車に続いてその仮設病院の鉄の門をくぐった。


現れたのは、高貴な生まれだとひとめでわかる優雅なオーラをまとった女性。結いあげた髪を真珠があしらわれたコームで彩り、首まできっちりと覆われたレースボタンで閉められた紺色のシンプルなワンピースに身をつつんでいる。


それは、病院を訪問するに相応しいものであったが、彼女のオーラを包み込むのには不足であった。深い威厳に包まれた穏やかな微笑みは、見る者に尊敬と畏敬の念を抱かせる。


その名はアレクサンドラ・オブ・デンマーク。現在の国王の母であり、先王の妃。


話すたびにしゃらりと鈴が響くような心地よい声で、Dr.トーマスに伴われ、病室に横たわる病人ひとりひとりのそばに寄り、優しく声をかける。普段から人々との触れ合いを大切にしている彼女は、イギリス国民のプリンセスだと若い頃から愛されていた。


その彼女がすべての患者たちに声をかけた後、最後に自然な流れで、屋敷の奥に位置するテリュースの病室に移動する。お付きの者はみな病室からかなり離れた廊下に控えた。

ドアが開いた時、ベッドにいたテリュースは、アレクサンドラ王太后に従って部屋に現れたダグラスを見て、胸騒ぎを感じる。


“なぜ、ダグラス卿が一緒にいるんだ?”


それでも内心の動揺を隠し、ベッドからおり、服を整える。本来、見舞いを受ける者はベッドに寝たままでよいのだが、テリュースはそうしなかった。


杖をついて立ち上がると首を大きく傾げて下を向き、正式な王族への挨拶、”ネックバウ”で敬意を示す。その様子を見て、アレクサンドラ王太后は穏やかに微笑み、ダグラスの案内で部屋にあった応接用の長椅子に優雅に腰をかける。


そして、彼女は、テリュースにも椅子をすすめた。ダグラスは、部屋の隅に立ったまま影のように控える。


「久しぶりですね、テリュース」


そう声をかけるアレクサンドラ王太后。


テリュースが屋敷に引き取られて間がない頃、護衛に守られた女性が、バッキンガム宮殿から程近いベルグレイヴィアにあるグランチェスター家の屋敷を非公式に訪れることが幾度かあった。


それが目の前のアレクサンドラ王太后であった。


リチャードの父親にあたる今は亡き”先代当主”のその妻である祖母は、イギリス王室から”降家”したのだと聞いたことがあった。イギリス王室の血をひくテリュースの祖母。


「傷の具合はどうですか?痛みますか?」


「ありがとうございます、王太后殿下。まだ少し痛みはありますが、だいぶ良くなっています」


先に声をかけるのは”王族”と決まっている。反抗しながらも”イギリス貴族のマナー”を厳しく叩き込まれたテリュースには、王室メンバーに対して、どうするべきか、どうしてはいけないか、すべてわかっていた。


「しばらく意識が戻らなかったとか。本当に大変でしたね」


戦火の中、イギリス艦隊が客船を護衛するべきであったとの世論も出ている中、王室のメンバーには政府の対応に意見や私論を語ることは許されていなかった。王太后はあえてその話題には触れない。


「テリュース。もう何年も前ですが、わたくしがロンドンのグランチェスター家の屋敷を訪れた時のことを覚えていますか?」


「はい、覚えております」


テリュースは短く答える。本人はまったく意図する意思はないのだろうが、公爵家の子息としての教育に加え、舞台上で、指の先まで神経を張り巡らす俳優としての時間が、彼を王族にも堂々と対峙できるほどの隙のない典雅な物腰を身につけさせていた。けが人として、病院で与えられた簡素な服を着ていてですら、まるで王者のように見える。そんなテリュースを見て、満足げに微笑むアレクサンドラ王太后。


「幼いそなたは、ここにいるダグラス卿によくなついていましたね」


「────そう……だったと記憶しています」


「あの時のそなたは、小さくてかわいかった。今は、ずいぶん立派な紳士になりましたね。アメリカブロードウェイの俳優であるとか。今のあなたならば、グランチェスター公爵家の跡継ぎとして相応しいと誰からも認められることでしょう」


「・・・・・!」


アレクサンドラ王太后の言葉に、身構えるテリュース。

「テリュース。単刀直入に言います。何も言わず、今からわたくしと共にロンドンに戻りなさい」


「王太后殿下と………ロンドンへ?」


「そうです。グランチェスター家の正式な跡継ぎとして戻るのです」


通常ならば、王家の人間が、公爵家のことに口を出すなどありえないことだった。


「恐れながら………。それはできかねます」


“絶対零度”のテリュースの冷たい声。


「あなたの弟が………、レイモンドが戦死したのです。そなたはグランチェスター家の長子。跡を継がなくてはなりません」


「何を勝手な………………」


テリュースは、頭に血がのぼるのを感じたが、深く息を吐いて冷静さを保つ。”ふざけるな”と怒鳴りたくなるのを必死に耐える。相手は王太后なのだから。


「私はグランチェスターの面汚しと幼い時から蔑まれ、いつかこの家を出ていくんだと固く誓っておりました。今回イギリスへ戻ってまいりましたのは、正式に手続きをとり、グランチェスターとは縁を切るため。跡継ぎになる気など毛頭ありません」


「その決心は固いと?」


「────はい」


「わかりました、テリュース。では、わたくしは、今からあなたに重要なことを話さなくてはなりません。かつて、そなたの父、リチャードにも話したことです」


アレクサンドラ王太后は、ドアの方にチラリと目をやり、少し声を落とす。人払いはしているが、念には念を入れておく必要があった。


「あなたの祖母グロリア・フランセス・グランチェスターは、王室からグランチェスター公爵家に嫁ぎ、ふたりの息子とふたりの娘に恵まれました。ですが、成人したふたりの息子を次々と病気で亡くしてしまったのです」


7歳でセント・ポール学院に入学したテリュースだが、まだグランチェスターの屋敷にいた頃、何度か”祖母”という女性を見かけたことはあった。テリュースには、笑顔を見せたこともない、いつも冷たく取り澄ましている女性。


「ここイギリスには”男子”しか家督を継げないという法律があるため、あなたの祖母は、”跡継ぎとして据えるため”に、仕方なく”妾腹”であったあなたの父、リチャードの行方を探しました」


「───妾……腹??」


「そうです。あなたの父リチャードは、あなたのおじいさまとひいきにしていた女優との間に生まれた子です」


アレクサンドラ王太后の衝撃の告白に息を飲むテリュース。


─────父さんが??

貴族の中の貴族と言われ、生まれながらの公爵だと疑いようのない父親。


「血は争えませんね、テリュース。我々がリチャードを探しだした時、彼はロイヤルシェイクスピア劇団(RSC)に所属する俳優となっていました。同じ劇団に所属する恋人がいて、それがあなたのお母様、エレノア・ベーカーです」


アレクサンドラ王太后から語られる真実は、今まで読んだどの小説より、空想物語に思えた。


「リチャードは、当初跡継ぎとしてグランチェスターに入って欲しいという我々の頼みを頑なに拒否しました。しかし、言う通りにしなければ、”恋人の命はない”と伝えたところ、グランチェスターを継ぐことを承諾したのです」


「────命がない?」


テリュースが鋭く聞き返す。
「王太后殿下。その件は、テリュースさまにはどうか……………」


ダグラスが恐れながらと口を挟むとアレクサンドラ王太后は、掌を上げて制止の姿勢をとる。


「よい、ダグラス卿。話さなければ、テリュースは納得しないでしょう。話せば自分の置かれている立場がわかるというもの。どうしなくてはならないか」


「ですが、それを話せば王室に対して不信感が募ります」


ダグラスも譲らない。


「構いません。それが王室というものですから。リチャードもそれを受け入れたのです。そして今では、グランチェスター家の長い歴史の中でも、最も偉大な当主のひとりとなりました」


なおもアレクサンドラ王太后は美しい声で残酷な言葉を紡ぐ。


「いいですか、テリュース。王室の力を持ってすれば、証拠も残さず、事故死に見せかけて人を葬ることもできるのです。」


そう言えば昔。

テリュースも耳にしたことがあった。若き王女との身分違いの恋が取り沙汰された彼女の護衛官の不審な死。


宮殿を出たまま姿を見せなかったその護衛官は、数日後、ロンドン郊外の湖に浮かんでいるところを発見され、捜査は行われはしたが、詳しいことは発表されず、原因はわからぬままだった。王家を取り巻く血塗られた陰謀が、歴史とともにあることは、誰もが知るところだった。


「────つまり。あなた方は父に、恋人を殺されたくなければ言うことをきけと”脅した”と言うのですね?」


「テリュースさま。そのお言葉は王太后殿下に対しては……………」


「よい、ダグラス卿。言葉を選ぶと真実が見えなくなりますから。そうです。RSCを辞め、グランチェスターを継がなければ、エレノアの命の保証はないと伝えました。リチャードはそれを受け入れ、跡継ぎとなったのです。そして、グランチェスターに入るとすぐに、兄の婚約者であったマーガレットと結婚しました」


衝撃的な真実に、蒼白になるテリュース。


「彼女は……………。エレノア・ベーカーはその事実を知っているのでしょうか?」
 
「知るはずがありません。わたくしがリチャードにすべてのことを口外しないように言いましたから」


冷たい汗が背中を伝う感触が、テリュースを襲う。


────母さんは知らなかった。父さんが母さんを捨てたのは、自らの意思ではなかったことを。


「その後、エレノアはアメリカに帰国し、極秘のうちにあなたを出産しましたが、わたくしとあなたの祖母は、それも把握していました。ですから、グランチェスターの血をひくあなたを、跡継ぎに何かあった時の”スペア”として、イギリスに連れてきたのです」


───”スペア”。


跡継ぎに何かあった時の『代替品』として。


アレクサンドラ王太后の言葉が、テリュースの頭の中でガンガンと響く。


父親に愛されてはいないのに、なぜテリュースを母親の元から連れ去って、イギリスに連れてきたのかと不思議だったが、そういうことだったのか。


記憶に残る母との別れ────。


目に涙をため、『連れて行かないで、私のテリィを!』と叫ぶ母。

千切れちぎれの幼き日の記憶。その意味が今ようやく理解できたテリュースだった。


グランチェスター家を守るためだけに、父と母を引き裂きテリュースを母から奪った王家と祖母。


それを動かしていたのが、目の前のこの人だというのか。


「わかりましたか?テリュース。このままおとなしく、わたくしとロンドンに向かうのです」


「────いやだ、と言ったら?」


なんとかして、この場を切り抜けなければ。


今日届くハズの列車のチケットを受け取り、グレトナ・グリーンに向かうんだ。ふたりの逃避行はすぐ目の前にあるのだから。


「テリュース、嫌だとは言えないのです。あなたはグランチェスター家に戻らねばなりません」


「それならば、ここでしばらく静養し、傷が治ってから戻ることにします」


断固としたテリュースの言葉に、アレクサンドラ王太后は何もかもお見通しであるかのように、薄い微笑みを浮かべた。


「テリュース、まだわからないのですか?あなたも愛する者の命が大切ならば、王家に逆らわないことです」


そこで言葉を切り。


「彼女────、キャンディス・W・アードレーと言いましたか。あなたの大切な女性の命を我々は握っているのですよ。事故を装って葬ることなどぞうさもないこと。彼女が、トゥールーズの病院からここへ、永久に戻ってこれなくなってもよいのですか?」
「……卑怯な!!」

思わず、叫んだテリュースにアレクサンドラ王太后が静かな声で告げる。


「なんとでも。そうやって王家を………この国の歴史と秩序を守ってきたのです。テリュース、王家に列なるグランチェスターの血を引くということはそういうことなのです」


すでにダグラス卿を使って色々なことを調べあげていることが、テリュースにもわかった。詳しく、すべてを。今さら、キャンディとはそんな間柄ではないと申し立てても無駄なのがわかる。


どこまで知っているのか?キャンディの素性、俺との関係。


「────もしや、今日、彼女を遠いトゥールーズまでやったのは、あなた方の企みなのですか?」


「そうです。ダグラスにそう手配させました。あなたが、わたくしとここを離れる時に、騒ぎを起こさないようにです。そうでもしないとあなた方は別れることなどできないでしょう。」


詳しく調査され、用意周到に準備された計画。今さらながら自分の甘さに腹が立つテリュースだった。


「この法治国家で、人ひとり、葬るなどできるわけがない───!」
「できるかどうか、やってみましょうか?」


「────くっ」


テリュースは拳を握りしめた。
脅しじゃない。アレクサンドラ王太后は本気だ。歪んだ考えだが、それが彼らの”正義”なのだ。テリュースには、それがよくわかった。


“こんな血など豚にでもくれてやる。この身体の中に流れるグランチェスターの血など一滴も残さず流れ出てしまえ!”


テリュースは、心の中で叫んだ。
そんなテリュースに。


ふっと。


アレクサンドラ王太后の瞳が、寂しげに翳る。かつてイギリスの宝石と呼ばれるほどの美幌を誇る彼女は、夫の愛を他の女性と分け合わなければならないことに長い間苦しんだ女性でもあった。


「────哀れ、ですね。アメリカであなたの帰りを待つ婚約者は。あなたを信じ、帰りを待っているのに、あなたは他の女性のことで頭がいっぱいなようですね」


ポツリと口にする。それは、テリュースを責めると言うより、何か遠い昔を追憶しているように見えた。


「それは・・・」


────スザナ。忘れたことなどなかった。命をかけて自分を救ってくれた人。


だが、目の前にキャンディがいるのに、気持ちを押さえることなど不可能だった。


“───すまない、スザナ。俺を許すな”


テリュースが血の滲むほど唇をかむ。そんなテリュースにダグラスが声をかける。


「時間がありません。テリュースさま、準備をなさってくださいませ」


恋をして、愛を知り、生まれ変わったように見えるテリュース。いつも暗い瞳をして、すべてを諦めたように佇んでいた少年が、あの女性といる時だけはあんなにも屈託のない笑い声をあげている。彼女が───。キャンディスという女性がテリュースをそんなにも変えたのだとダグラスはわかっていた。テリュースのその愛を守ってやりたいと思うダグラスであったが、何よりも大切なのは、『グランチェスター家を守る』こと。


「キャンディスさまには何も伝えることはできません。手紙を残すこともしてはいけません」


やがて。


テリュースは、ふたりに静かな顔をむける。


「────わかりました。着替えをしますので、しばらく時間をください」


ふたりが、部屋を出ると。


テリュースは、服を着替え、ハーモニカをポケットに入れると、杖をついて窓辺に近づく。


表からは抜け出せない。ここからなら───。


そっとカーテン越しに外を見ると幸い人影はない。テリュースは迷わず窓枠に手をかけた。


『なんとしても脱出し、キャンディに会わなければ』


厳重な建物から抜け出すのは、得意だった。セント・ポール学院でもシスターにバレないように抜け出すなどわけがなかった。


だが、今は思うように身体が動かない。


テリュースは、窓の向こうに杖を投げ捨て、窓から身を乗り出すと、飛び込むようにして向こう側へ落ちる。


ドサッ。


痛っっ───。


怪我をしている肩から落ちて、ぶざまに地面に転がる。痛みに血の気が引き、しばらく息ができないが、頭にあるのは、なんとかここを脱出して、キャンディに会うという思いだけだった。


痛みが少しおさまるとすぐに起き上がり、周りを注意深く探りながら、建物沿いをゆっくりと裏側に回る。


幸い、ガゼボと花壇の先にある裏の門は開いていた。


あそこから外に────。


テリュースはもう1度周りを見渡し、人影がないのを確認すると杖を握りなおした。


今だ!


一気に裏門を目指して小走りにかける。


何十時間もかかったような気がするが、かかったのは数分。テリュースは裏門に到着し、やっとの思いで道路に出た。


──────と。


裏門の向こうに。


ダグラスと数人の黒服の男たちが立っていた。絶望的な状況に息を飲むテリュース。


「ダグラス卿、お願いだ。このまま見逃してくれ」


テリュースはダグラスに懇願する。


「テリュースさま、それは叶いません。お戻りくださいませ」


なおも走ろうとするテリュースに、男たちが一斉に飛びかかる。


「離せ!離しやがれーー!!」


叫びながら、テリュースの心は彼方へと飛んでいた。


──────キャンディ!!!!!


君に伝えなければならないのに────!!

日が傾きはじめた頃、テリュースたちを伴ったアレクサンドラ王太后の車列は、ロンドンの高級住宅街、ベルグレイヴィアにあるグランチェスター家の屋敷の門をくぐり、車寄せまでくるとゆっくりと止まった。


車中、テリュースはダグラスとは視線をあわせず、ずっと外の景色を見ながらキャンディのことを思っていた。


“俺のいなくなった病室に帰り、キャンディは、どれだけショックを受けるだろう”


“理由も告げずいなくなった俺のことをキャンディはなんと思うのだろうか”


“突然、心変わりしたと思うだろうか?”


“いや。そんなことを思うはずがない”


“病院のスタッフから、アレクサンドラ王太后と共にロンドンへ戻ったと聞くはずだ”


“だったら、なぜ手紙のひとつも残さないのだとおもうだろう”


気持ちは千千に乱れ、思いは嵐のように吹きすさぶ。

そして、サウザンプトンから遠くなるほど、全身からドクドクと血が流れ出るような感覚に陥るテリュースだった。

「テリュースさま。到着いたしました」


ベルグレイヴィアの特徴である白い漆喰の壁、グランドテラス、まわりの風景に溶け込みながらも一段と瀟洒な4階建てのグランチェスター邸。


アレクサンドラ王太后の到着に、本来ならば使用人たちが整列をして迎えるところだが、グランチェスター家に立ち寄るのは極秘のため、迎えの姿はない。


お付きの者がドアを開け、”ディムラー”から王太后が、その後ろの車からテリュースとダグラスが降り立った。


「怪我を負っているそなたに無理をさせてしまいましたね。しばらく我が家でゆっくりと静養なさい」


いつもはサンドリンガム・ハウスを住居としているアレクサンドラ王太后は、戦争が始まってからは、ロンドンに戻ってきていて、それだけ言うと屋敷には入らず、再びディムラーに乗り込むとそのまま居城に向けて出発した。

テリュースとダグラスは”ネックバウ”で、車列が見えなくなるまで見送る。


どのくらいそうしていただろうか。

「お疲れになられたでしょう。まずテリュースさまのお部屋に戻られますか?」

ダグラスが静かに声をかけた。


テリュースはゆっくりと顔をあげる。


グランチェスター家の屋敷は、テリュースに『過去』という名の苦い記憶を否応なしに思い出させる。


“話しかけても自分の目を見ようともしない父親”


“一日中ひとりぼっちで過ごすライブラリー”


“高い天井の寒い部屋、豪華なカトラリー、凍える孤独な食事”


“最上階の1番端に与えられたテリュースの私室”


使用人のための住居や作業場は半地下に、ライブラリーや大広間など公のスペースはグランドフロアに、父親や母親、祖母や弟妹たち家族の部屋は2階に、3階はゲストのための客室になっていて、テリュースの私室のある4階は、資料や美術品の保管のための部屋があるフロアであった。

デリュースは、ダグラスの問いに、自分の”部屋”はまだこの屋敷にあるのかと皮肉な気持ちになったが、声に出して言ったのは別のことだった。


「どうせ、父さんにあわなければならないのなら、今会います。嫌なことは先に済ませたい」

大きな円形の玄関ホールに入ると、子供の頃から見慣れた顔の年老いた執事が、ふたりを迎える。

ダグラスを伴っているせいか、珍しくテリュースにも恭しく礼をした。
「奥さまとジュリアさまたちは、レイモンドさまのご葬儀後、ずっとご領地のカントリーハウスに行っておられます。大奧さまは、一昨日ウィンダミアの別荘に出発されました。ですから、今ロンドンにはだんなさましかおられません。」


リチャードの所在を尋ね、執事にコートを預けるとダグラスは先に立って、無言で静寂に包まれた長い廊下を歩く。玄関ホールからリチャードのいる書斎に至るロングギャラリーは、先祖の肖像画を飾ってあるのだった。

その肖像画の数々が、以前と変わらず、こちらを威圧するように見えるのはなぜなのだろうとテリュースは思う。この人たちの血が自分にも流れているのだとは、正直まったく思えなかった。


「テリュースか────」


ダグラス卿に連れられ書斎に入ってきたテリュースを見て、リチャードの低い声が響く。
日が傾きかけた室内はろくに灯りも灯していないせいかうす暗かった。コンソールとデスクの上に置かれたランタンだけがその周辺を照らしている。


デスクに向かっていたグランチェスター公爵リチャードは、やつれた顔をそれでも凛と上げた。イギリス貴族の中で、知らぬものはいない名門グランチェスター家の当主。


机の上には誰かに手紙を書いていたのか、封蝋や万年筆、書きかけの便箋があった。

リチャードは、テリュースとダグラスにソファに座るように言うと自分自身もそこに移動する。

そこへ、執事が三人分の紅茶を運んできた。


執事が部屋を出ていくと───。


「ひどい顔をしているな」


そう口にするリチャード自身も同じくらいやつれた顔をしていた。


疲れはてた父の姿に、若き日の青年の幻影が重なる。


幼き日、遠い目をした父親の視線の先に何が見えているのだろうとずっと思っていた。


テリュースが思うより多くのことを抱えてきた父、リチャード。


兄の婚約者だった女との間に生まれた子供の死。その死はやはり悲しいものなのかと皮肉な気持ちになるテリュースだったが、何も言わず、腰をかけたまま、父リチャードの次の言葉を待つ。


しばらく、ふたりの間に重たい沈黙が落ちる。


再び、口を開いたのはリチャードだった。


短く嘆息し、テリュースの瞳をのぞきこむ。


「────守りたい者が、あるそうだな」


「・・・・・・」


テリュースが、王太后と共に屋敷に戻ってきたということがどういうことか、リチャードにはわかっていた。またあの時と同じように、王太后はテリュースを説き伏せたのだ。そして、今まで語られることのなかった自らの半生を息子が知り、すべてを理解したのだと。そして、その事実に怒りの炎を燃やしていることも。


「それならひとつだけ、方法がある、テリュース」


今度は、ぽつりとリチャードの声が静寂に浮いた。


「方法?」


テリュースが皮肉な微笑みを浮かべる。そんなものがあるのなら、真っ先に自分が使えばいいだろうと心の中で毒づく。


そんなテリュースの心をすべてお見通しのように、リチャードが穏やかに言う。


「テリュース、大きくなることだ。誰にも潰されないほどに」


リチャードは、真っ直ぐにテリュースの目を見つめた。ずっとテリュースと視線をあわせるのを避けていた父親。テリュースは、今はじめて、父親の瞳の色を知った気がした。その瞳の中に、嘘はなかった。


「お前も知っているだろうが、イギリス、ロイヤルシェイクスピア劇団(RSC )の理事長は、”イギリス国王”だ。そして、そのRSCの”プリンシパル(主席俳優)”は、国王と肩を並べて立つことができる唯一の存在なのだ。俳優であっても、その力、影響力は巨大で、誰からも侵されることはない」


リチャードは、テリュースのブルーグレイの瞳から眼をそらさない。


「テリュース、お前がもし、RSCのプリンシパルになれば、お前のやることに干渉できる人間はイギリスにはいなくなる。国王を除いては、な」


「おっしゃる意味がわかりません」


冷たく突き放したテリュースの声音。


「いや。わかっているはずだ。お前は今、”力”が欲しいと思っている。誰にも邪魔されず、愛する者を守れる力が」


リチャードのいたわるような声だった。


「それならばテリュース、RSCのプリンシパルになるのだ。その座につき、誰にも邪魔されないほど、誰にも潰されないほど巨大になれ。慣習と生まれながらの血に彩られた地位ではなく、自ら手にする不動の力。その力でお前の大切な人を守れ」


「────では、俺が役者を続けることを許すと言うのですか?」


「そうだ。テリュース。私と”取引”をしよう」


「─────取引?」


テリュースの心臓がざわりと音を立てた。


「私は、まだしばらくはグランチェスター当主の、この座をお前に渡すことはないだろう。

だから、お前は傷が治ったらもう一度アメリカに戻るのだ。そしてまず、ブロードウェイNo.1の俳優となれ。そして、その名声と実力を持ってイギリスに凱旋し、RSCプリンシパルの地位を得るのだ。その地位があれば、アレクサンドラ王太后ですら手は出せない。わかるな?テリュース、その意味が」


グランチェスター公爵というイギリス有数の名家の当主という立場。感情を圧し殺し、生きてきた父親。


『自分は、エレノアとお前を守るだけの力を持たないちっぽけな人間だった。だが、お前は愛する者を守れる力をつけろ』


ふと。そんなリチャードの心の声が聞こえた気がした。今ようやく父親を理解出来た気がした。


この人もそれが欲しかったのだ。テリュースにはそれがわかった。


テリュースは、長い間、心の中で逸らしていた視線をようやく父親にまっすぐに向けた。


ふたりを見つめるダグラスの瞳が濡れたように光る。


「だが、もし」


リチャードが、言葉を切る。


「お前が”プリンシパル”として戻れない時は、おとなしくグランチェスター家を継ぎ、決められた婚約者と結婚をするのだ。それまでは誰とも婚姻することは許さぬ。もちろん、この”取引”を口外することもならぬ」


「・・・・」


「どうだ。それが私とお前の”取引”だ」


これがリチャードなりの息子を守る方法だというのか?それとも体よくグランチェスターの跡継ぎになることを約束させられたということだろうか?テリュースには、よくわからなかったが、そんなことはどちらでもよかった。RSCのプリンシパルになれば、大切な物を守れるということしか、頭に残らなかった。


「義母上にも”あの方”にも私から話しておこう。もう少しだけ猶予をいただきたいと。今なら、それをお願いするくらいの力は、私にもあるだろう」


あえてアレクサンドラ王太后の名前を出さないのは、貴族としての暗黙のルールだった。
「わかりました。傷が治ったらブロードウェイに戻ります。そしてイギリスに戻り、RSCのプリンシパルになります。必ず!」


力強く答えるテリュースに、


「テリュース。時間は短いぞ。It is not in the stars to hold our destiny、but in ourselves.運命の鍵は星々の中ではなく,自分自身の中にある。今日、今ここから動き出すのだ」


リチャードが、シェークスピアの言葉を引用する。


「アメリカに、ブロードウェイに戻ろう。そして、RSCのプリンシパルになるんだ。グランチェスターの血を越え、グランチェスターに潰されないために。大切なものを守るために」
テリュースは運命の鍵を見つけた気がした。

いつも私のつたない物語を読んで下さってありがとうございます💕深く深く感謝しています💕


今回は実際のイギリス王室のアレキサンドラ王妃に出演していただきました💕
当たり前ですが、フィクションです🤣


王室と言えば忘れられないのが、私がまだ学生の頃、ある冬休みに出かけたロンドンでの出来事です。


ロンドンに高級ブランドが立ち並ぶ通りがあって、私とお友達が、某ブランド店でショッピングをしていると‼️


数人の護衛に守られたダイアナ妃が入って来られたのです✨✨✨なにげに、フツーに。仰々しくなく。


まだ時間が早く、お店には私と友達の他には数人のお客さんがいたくらい。騒ぎにもならず、他にいたお客さんもダイアナ妃に話しかけたりしませんでした。(もちろん気づいてはいたようですが)


私たちも妙に気を使って(笑)、『ダイアナ妃に我々がダイアナ妃だと気づいていることを気づかれないように』なんてしらじらしく商品に集中するふりをしたりしていました🤣


なんかね、普通にお買い物をさせてあげたい‼️なんておこがましいことを思ったりしたんです🤣


下記の写真は、その頃のダイアナ妃です。この頃には、もうすでにいろんなことを知り、表には出さないけれど、苦しんでいらしたのかなと今となっては考えたりします。


その頃、ロンドンの街中にこのセーターが売られていたのを覚えています。一匹だけいる黒い羊は、売られているセーターによって1枚1枚『いる場所』が違うんです💕下の方にいたり、左の方にいたり、右の上にいたり🤣


私ももちろん、購入しました✨
     ⬇️


漫画なかよしで読んだキャンディキャンディでは、


テリィと父リチャードとの関係は、
*『貴族の私生児として生まれ、贅沢な生活と不遇な立場のアンバランスさに悩み苦しみ、自分を取り巻く世界に反抗している息子』に手を焼いている大貴族の父というイメージでしたが、


ファイナルストーリーでは、


*『自分の過去の過ちを恥じ、テリュースの存在を疎ましく思っている父』という印象を受けます。


漫画とFSではかなり、リチャードのイメージも、テリィとの関係も違います。


①なぜ、わざわざエレノア・ベーカーとアメリカで暮らしているテリィを自分の元へ連れ戻したのか?


②エレノア・ベーカーとの関係は、一時の過ちで、今はその『愛』を恥じているのか?


③テリィに対しての気持ちはどうなのか?
を考えました。


①について。
私は、父リチャードが、テリィのことを『愛していなかった』とは考えたくありません。
エレノア・ベーカーとの関係も『いっときの過ち。今は恥じている』とは思いたくないのです。


そもそも、現実社会では貴族の私生児など、珍しいことではなく、たいてい面倒をみてもらえることもなく、放っておかれたようです。それをわざわざ自分の住む屋敷に呼び寄せ、名門の寄宿学校に入れるなんて、どうみても我が子に対して”愛”があります。


それに②なら、リチャードは、ゴージャスな美女(エレノア・ベーカーね🤣)の色香に欲望を押さえられなかった男
性ってことですよね?


日頃からセレブでパリピな男性ならある意味許せるけど(笑)、あんなに渋くて間違ったことなどしそうにない紳士が理性を押さえきれず『ついムラムラと』一時の気の迷いで~、なんて、カッコ悪すぎる‼️
エロオヤジじゃん😅
テリィがその血を引いているなんて絶対にイヤ‼️


なかよしのキャンディキャンディを読んでいた頃は、『エレノア・ベーカーとは愛し合っていたけれど、貴族とアメリカ人女優という身分違いの恋』でわかれなければならなかった、と思っていました。(ファイナルストーリーはそん
な感じではないですよね💦)


でも、それなら、なぜ、テリィをアメリカから呼び寄せたのか?そして、呼び寄せておきながら、テリィにリチャードが冷たい態度をとるのはなぜか?


色々妄想しました💕
そこで。
私は、リチャードは、エレノア・ベーカーを愛していたけれど、『どうしても別れなければ理由』があったと想定しました。
それが、今回の物語です。


こんな物語もありかな✨そんなふうにお許しいただけたら嬉しいです💕


まだまだ残暑が厳しいですが、みなさまご自愛くださいませ💕
たくさんの感謝を込めて💕 ジゼル

 

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ABOUT ME
ジゼル
「永遠のジュリエット」は、あのロックスタウンから物語がはじまります。あの時運命が引き裂いたキャンディとテリィ。少女の頃、叶うなら読みたかった物語の続きを、登場人物の心に寄り添い、妄想の翼を広げて紡ぎたいと思っています。皆様へ感謝をこめて♡ ジゼル

POSTED COMMENT

  1. 美紅 より:

    ジゼル様、ホームページ開設おめでとうございます:bouquet:
    ジゼル様の世界観満載のトップページ、素敵:sparkles: パソコンで見るとド迫力(≧▽≦)

    そして。
    なんだか物語も壮大な展開に! これこそ二次の醍醐味だわ。
    テリィパパが味方に付いたら、もう怖いもん無しですね。

    そしてそして。
    ジゼル様、リアルダイアナ妃をご覧になったのですね~:rose:
    凄いっ。なんて強運なのでしょう:crown: 
    羊のセーターも可愛い:sheep:

    これからも楽しみにしています:tulip:

    美紅:sparkling_heart:

    • ジゼル より:

      美紅さま。

      コメントをありがとうございます。

      ホームページに訪ねてくださり、感謝します。

      まだまだ使い方がわからないところもあって、バタバタしていますが、これからもよろしくお願いいたします。

      ダイアナ妃をお見かけできたのは、本当にラッキーでした。その頃はその後の悲劇は想像もできなくて。

      懐かしい時代です。

  2. パイシェル より:

    物語が,だんだん壮大になってきましたね

    リチャードの過去のこと、その方が物語として面白い気がします

    テリュースもちょっと可愛そうですが、なんとなくこの展開だったら、駆け落ちより堂々としていて、運命と真っ向から戦う感じで好きです     

    このために、その前にキャンディと、想いを伝え合ったのですね

    ストーリー展開すごいなと思いました

    この後のテリュースの演技も、成長も楽しみです^ ^

    • ジゼル より:

      コメントをありがとうございます。
      パイシェルさまから『駆け落ちより堂々としていて、運命と真っ向から戦う感じで好き』だとおっしゃっていただき、すごく嬉しいですそして、ホッとしちゃいます。

      やはり、何よりテリィにはブロードウェイのシェークスピア俳優として大成して欲しいと思っています。深く豊かなテリィのハムレット。
      それがまず、キャンディキャンディという物語のスタート地点ではないかと思っています。

      この当時のイギリスは第一次大戦中で、そのこと(悲惨さや残酷さなど)にも触れるべきかとも思いましたが、それよりも『公爵』の位を持つ貴族としてのテリィの宿命や俳優としての生き方にスポットライトを当てたいという気持ちがあって、今回の物語になりました。

      パイシェルさまのおっしゃるように、キャンディにもテリィにも『運命に立ち向かって』欲しいと思っているんです。

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